会員プロフィール

members top

CRITIC

長澤 忠徳 (ながさわ ただのり)
長澤 忠徳 (ながさわ ただのり)
武蔵野美術大学 造形学部 デザイン情報学科 教授
(有)長澤忠徳事務所 代表
デザイン研究所 主宰、I.C.E.所長
カルチュラル・エンジニア、デザインコンサルタント
専門分野 : デザインプロデュース、デザイン評論、デザイン教育、デザイン戦略立案
URL : http://www.musabi.ac.jp/course/undergraduate/di/

最初の肩書は、「情況デザイナー」だった。25年前、渡英直前、気負って名のった自 分の職業に、デザインの対象になるものならなんでもチャレンジし、新たな「情況」を創り出す決意を込めた。グラフィック、インダストリアルなど、世間に通 用するジャンルを冠することが、なんだか古臭いように思えてならなかった。帰国して「デザインコンサルタント」を名のり、事務所を開いて仕事を始めると、 何のデザインが専門ですかと、よく聞かれた。「あれもこれも」と答えた。なかなか理解してもらえないことは、最初から覚悟していた。だから最初から自営し た。楽ではないが、転向しようとは思わない。そういう「わかりにくさ」にこそ、デザインがその本来の力を発揮すべき「原因」があるからだ。ほとんど総べて の仕事は、プロジェクトチームを組んでやってきた。私の役目は、クライアントの相談相手であり、チームの世話係。アジテーターとカウンセラーを同時にこな すことが必要だった。「どうすればいいのかわからない」時にこそ、「デザインコンサルタント」が役に立つ。今、きっと役に立てる。

デザインは、経営革新、意識改革の機会を創出する

かつて、「黄昏れ」と評され、どん底にあった経済低迷の英国病を克服すべく、シティを激震させた金融ビッグバンを断行した英国のサッチャー首相は、同時 に、学校教育にまで及ぶ大規模で画期的なデザイン振興政策を実行した。1980年代初頭のことである。今日につながる英国デザイン隆盛のその端緒は、50 名のデザイン関係者をロンドンの首相官邸に招いて開かれたデザインセミナーであった。英国王立芸術(大学院)大学(Royal College of Art)に留学していた私は、学生時代にその低迷状況を現地で経験し、帰国後も、デザイン振興によって英国が新たな活力を取り戻していく様を、政府から依 頼され派遣された現地調査や、英国の仲間とロンドン、東京を拠点に設立したシンクタンク、Design Analysis International 社の活動によってつぶさに見てきた。

生 活大国の名のもとに、日本がバブル経済に踊った80年代後半、私は仲間とともに、デザイン振興政策のパワーを得て台頭してきた英国の若手デザイナーによる 新しい英国デザインの紹介を積極的に推進し、日本を発射台にした英国デザイン・ブームを精力的に仕掛けたが、それはまた、日本のデザインが世界水準への仲 間入りをする重要な戦略でもあった。その貢献から、企業誘致の先頭に立って来日したサッチャー首相に会見することになり、デザイン振興政策の戦略的な活用 に関して話す機会を得たが、何よりも、一国の首相がデザイン振興に直接言及され、政策を主導されたことの意味と意義の重要性が、今も頭を離れない。
その政策は、デザインを活用して、経営革新の機会創出を仕掛け、教育改革にまで打って出た奥の深いものであり、短期間に優れた商品を増やしたいといった近 視眼的な発想ではなかったからである。デザインは、そもそも新しい価値の具現術であり、産業分野別の専門技術である以前に、価値開発と価値の認識をつなぐ プロセスの基礎となる汎技術であり理解力なのである。

あ れから20年、そしてサッチャー首相に会見して10余年、あの戦略的デザイン振興政策は、20年かかるとの予言どおり実を結び、デザインは、英国の新しい 文化と経済活力の源泉として、成熟した経済を超越した新たな経済構造の重要なファクターとして社会装置化されるに至っている。
経済低迷からの脱出に決め手を欠く日本に、そして政府に決定的に欠落しているのは、戦略的なデザイン活用のための「デザイン」の重要性に対する認識と文明 史観である。今、日本は、20年前の「黄昏れの英国」と同位相の閉塞感に閉じ込められている。この状況を打開するためには、英国の先例に学び、日本独自の 新たなデザイン振興政策として、汎技術としてのデザインのダイナミックな活用が、今こそ有効であると、経済産業省に働きかけている。そうした無理難題を解 く任を担える人材こそ「デザインコンサルタント」であり、新たな活力創出のために働きかけることもまた「デザインコンサルタント」の重要な使命だと信じるからである。

略歴

1978年 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業、後渡英。
1981年 英国王立芸術(大学院)大学修士課程修了、後帰国し、事務所を開設、仕事を始める。
1986年 事務所を法人化、有限会社長澤忠徳事務所・代表取締役となり現在に至る。
1987年 Design Analysis International Limited(本部ロンドン)ディレクター/日本代表(1992年まで)
1993年 東北芸術工科大学設立に伴い、同大学デザイン工学部情報デザイン学科助教授に就任。
1999年 東北芸術工科大学デザイン工学部、同大学大学院専任を辞し、武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科新設に伴い、武蔵野美術大学・教授に就任。

学会等

基礎デザイン学会会員(理事)/芸術工学会会員/日本デザイン機構会員

活動暦

デザインを専攻した当初より、構想力としてのデザインを標榜し、留学から帰国後すぐに事務所を開設、グラフィック、エ ディトリアル、広報戦略、事業開発、環境開発、産業振興、文化事業開発、情報サービス開発、デザイン評価コンサルティング等の実務をはじめ、デザイン振 興、地域振興、国際デザイン展やフォーラムの企画監修、高度情報化社会への新しいデザイン概念の研究、次代のデザイン人材育成のための教育など、コンセプト立案、プロデュ−ス、プランニング等、デザインの仕事を開始して以来一貫して、「カルチュラル・エンジニアリング」と名付けたジャンルを特定しない幅広 い活動を国際展開している。

これまでに、公設試験研究機関、政府・地方自治体のデザイン顧問や委員、デザイン賞等選定審査員、講師等としてデザイン振興支援活動を展開する一方、国際デ ザイン情報ネットワークを構築、英国に本拠を置く国際デザイン・シンクタンク「Design Analysis International Limited」の設立に参画、ディレクター/日本代表、また、英国王立芸術(大学院)大学・学術顧問として英国デザインの日本紹介に精力的に取り組む一方、フランスを代 表する世界的ブランドの産業団体・コルベール委員会・学生デザイン賞オーガナイザー、オランダデザイン研究所・国際顧問、また、通産省グッドデザイン商品 選定(現、グッドデザイン賞)審査委員(1987年より2001年まで)、財団法人日本産業デザイン振興会、財団法人国際デザイン交流協会の委員、客員研 究員等を永年にわたり歴任した。

広報、政策分野においては、富山県イメージディレクター等を永年つとめ(2000年、富山県功労者表彰を受ける)、社団法人日本広報協会技術顧問(現、広報 アドバイザー)、政府広報評価委員会委員、全国広報コンクール審査委員、行政広報研究会ニューメディア部会長、事業部会委員、文部省国立大学高専広報審査 委員、総務庁、総務省統計局、総理府、内閣府、内閣広報室、建設省関東地方建設局等、政府や地方自治体関連機関の多くの委員会委員、審査委員、講師等をつ とめたほか、「全国高等学校デザイン選手権」、「フクイ・デザインマインド・コンペティション」をはじめ、「子どもたちの12歳を考える会」の顧問など、 新しいデザインと社会教育運動を提唱し展開してきた。また、社団法人日本広報協会、市町村アカデミー、全国町村議会議長会ほか、各種行政研修機関や地方自 治体等の教育研修プログラムの講師、さらには、経済産業省戦略的デザイン活用研究会委員、高知県文化環境アドバイザー、その他、自治体の登録技術アドバイザーなど、多数の公職をつとめている。

デザイン・コンサルタントとして、各種の国内民間企業、海外企業、地域産業、地方自治体等の様々なデザイン関連プロジェクトに従事、顧問、オーガナイザー、 コーディネーター、ディレクターをつとめる一方、「デザイン・ロジスティクス」、「デザイナーシップ」、「カルチュラル・エンジニアリング」など、デザイ ンに関わる新たな概念を提唱、海外のデザイン振興機関や大学、研究機関との多数のプロジェクト実績、デザイン振興活動で知られ、国際インダストリアルデザ イナー団体評議会公認「デザイン振興エキスパート」として、また、米国を拠点とする国際知識人のネットワーク「General Thinkers」会員としても国際登録されている。

著書等

主著に、デザインの新たなパラダイムを説く「インタンジブル・イラ」(サイマル出版会/1988)をはじめ、「現代デザイン事典」(平凡社/2000~)、「デザインコンサルタント」(JDCA 出版局/2001)、「広報紙面デザイン技法講座」(日本広報協会/2002)などのほか、デザイン、広報技術、情報社会、デザイン教育、地域振興、産業 経済分野の共著、論述、専門雑誌等への寄稿、インタビュー掲載、紹介記事は多数。また、日本国内各地およびイギリス、イタリア、オランダ、シンガポール、ドイツ、デンマーク、フィンランド等、海外での多くの講演のほか、NHK、国内民放各社、英国のBBC、ITV、イタリアのRAI衛星国際放送をはじめとする国内外のテレビ、ラジオ等マスメディアにも出演している。