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私が現在所属しているイードという会社は、元々は1990年に日産自動車のデザインセンター(当時)が主体となって設立された会社で、社名のイードというのは「INTERFACE
IN DESIGN」の略「IID」から取ったものである(2001年に企業買収で日産グループから独立し、現在に至る)。そのデザインにおけるインターフェイスという意味合いは、感性と論理を統合するもの、あるいは作り手(メーカーやデザイナー)と使い手(ユーザーや生活者)を結ぶものということで、引いては「経営とデザイン」をビジネス的にも上手く結びつけることを目指してスタートした。このようにデザインを基軸にしたクリエイティブな調査会社はユニーク、かつ全く新しい業態であり、当時は(普通のデザイン会社と区別する意味もあって)「デザインしないデザイン会社」という異名を取って話題となった。そのデザインリサーチ&クリニック会社としてスタートした新会社も、1999年にファイナリサーチという市場調査会社と合併することによって、現在はデザインとマーケティングが融合した総合的なコンサルティング会社として活動をしている。
その10年あまりの歴史の中で、頑なに貫いてきた基本姿勢がある。その1つ目は、経営とデザイン(デザイナー)とのインターフェイス役を担うためには、中立の立場でのコンサルが求められる。またそのベースとなるのが、「客観的かつ専門的な観点からのデザイン評価に始まり、その成果の評価・検証で終わる」という一連のプロセスになるという宿命から、自らは直接クリエイティブなデザインワークには手を染めないということである。2つ目は、デザイナーの感性や直感は信じながらも、その提案コンセプトや受容性の中身を経営者や他部門と共有化するために、臨床心理学やマーケティングリサーチの手法を駆使しながら(場合によってはオリジナルな解析手法を開発して)デザインの世界を可能な限り論理の世界に投影することに努力してきたことである。振り返ってみると、(自らは具体的なデザインをしないがゆえに)実は企業のデザインそのもの(意思決定等)に深く関わることができたわけで、いわば「Design
of design」(企業や市場におけるデザインの活かし所のデザイン)に「デザインしないデザイン会社」としての醍醐味を見出してきたといえる。また、そこでの経験はたいへん有意義なものであったし、今後のコンサル活動においても貴重な財産となることに疑う余地は無い。
だが最近の日本の社会情勢と産業界やデザイン業界を見ると、これまでの貫いてきた基本姿勢にも揺らぎが生じてきたというのが正直なところである。もはや「デザイン」という行為が特別なものではなくごく普通の言葉として陳腐化してしまった感があるが、今こそデザイン自体の役割とその可能性を具体的な成果をもって広く再認識させる必要があるのではないか。またプロダクトデザインにおいては、あくまでデザインを含めた総合力としての商品力やブランド力の競争が成熟市場の実態であって、デザインだけを突出させても一瞬話題にはなるかもしれないが利益に結びつかない… そこでは、むしろデザインをより戦略的に活用するための「プロデュースセンター」機能が必要になると思われ、そのニーズに先駆けた仕組みづくりに向けてそろそろアクションを起こしたいと考えている。つまり、今度は(別会社となるかもしれないが)「デザインする戦略デザイン会社」を誕生させ、近い将来デザインも投資の対象となるような夢を実現させたいのである。 |
公職: 武蔵野美術大学、福井県立大学非常勤講師 著書: 「企業が変わる デザイン戦略経営入門」(共著、1992年講談社) | ||||||||||||
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